ピッキングとは、作業指示書の通りに商品を集める業務のことです。このピッキングが正確に行われないと、誤った出荷の原因となります。そのため、在庫管理業務においてピッキング業務の重要性は高いです。本記事では、そんなピッキング作業の効率化の方法を中心に詳しく解説します。
そもそもピッキングとは
物流におけるピッキングとは、倉庫や物流拠点において、作業指示書(ピッキングリスト)に従い商品を保管場所から取り出す作業を指します。この作業は、物流プロセスの中でも出荷準備の重要なステップであり、正確かつ迅速に行わなければいけません。ピッキングされた商品はその後、検品、梱包、送り状の貼付、仕分けといった一連の工程を経て配送部門に引き渡され、最終的に顧客の手元へ届けられます。手作業でのピッキングの場合、作業者は商品を間違えずに選ぶ高い技能が必要となります。
誤った商品をピックアップしてしまうと、出荷遅延や返品対応などの問題が発生し、物流全体の効率に悪影響を及ぼすことでしょう。そのため、作業には正確性だけでなく、迅速さや作業効率も求められます。
近年では、ピッキング作業の効率化を図るために、システムや専用機器の導入が進んでいます。例えば、バーコードやRFIDを用いた商品管理、音声指示やハンディターミナルを活用したピッキング支援などにより、作業の正確性とスピードを同時に向上させることが可能です。
このような技術の活用により、物流業務全体の品質向上や出荷スピードの短縮が期待できます。つまり、物流におけるピッキングは単なる商品の取り出し作業ではなく、出荷プロセスの中核を担う重要業務です。人の技能と技術の両面で効率化を図ることが、物流全体のパフォーマンス向上につながると言えます。
ピッキングの方法
物流業務におけるピッキングには、大きく分けて三つの方法が存在し、それぞれ特徴や適した運用環境が異なります。倉庫の規模や扱う商品の種類、出荷頻度に応じて最適な方法を選択することが重要です。シングルピッキング
まず、シングルピッキングは、注文ごとに商品を取り出す最もシンプルな方法です。各注文に対して個別に商品をピックアップするため、取り間違いが起きにくく、正確性が高い点が大きなメリットです。さらに、倉庫管理システム(WMS)を活用すれば、作業精度をさらに向上させることもできます。
しかし、注文ごとに保管場所を回る必要があるため、作業者の移動距離が長くなり、作業時間も増加するというデメリットがあります。このため、作業効率を重視する大規模な倉庫ではやや不向きです。
トータルピッキング
トータルピッキングは、複数の注文をまとめてピッキングします。これにより、保管場所への移動回数を減らすことができ、特に扱うアイテム数が多い倉庫での効率化に効果的です。一方で、まとめて取り出した商品を各注文ごとに梱包単位に仕分けする工程が追加されるため、仕分け作業のためのスペース確保や作業計画が必要となります。この工程の増加が運用面での負担になる場合もありますが、総合的には移動距離の削減による効率向上が期待できます。
マルチピッキング
最後にマルチピッキングは、シングルピッキングとトータルピッキングの利点を組み合わせたハイブリッド型の方法です。複数の注文をまとめてピッキングしながら同時に仕分け作業を行うことで、1回の作業で複数注文を処理できます。これにより、移動距離の短縮や作業効率の向上が可能です。しかし、ピッキングと仕分けを同時に行うため、商品を誤って入れてしまうリスクが高く、入れ間違いを防ぐための管理体制やチェック体制を整えることが不可欠です。
手作業で行うピッキングの課題
手作業によるピッキングには、物流業務の効率や正確性に影響を与えるいくつかの課題があります。まず最も顕著な問題はヒューマンエラーの発生です。作業者がピッキングリストを目視で確認しながら商品を取り出す手作業では、商品の取り間違いや数量ミスが起こりやすく、誤出荷につながる可能性があります。誤出荷は顧客満足度や信頼性の低下を招くため、物流全体の品質に直結する重要なリスクです。
この問題を軽減するには、倉庫管理システム(WMS)やバーコード、RFIDなどの専用機器を活用した業務自動化が有効です。
次に、手作業によるピッキングは作業時間の浪費につながりやすい点も課題といえます。商品の所在を目で確認して探す作業は時間を要し、特に在庫量が多い倉庫では保管場所と出荷エリアの往復が増えるため、作業効率が低下します。
こうした時間的負担を軽減するためには、注文をまとめて処理するトータルピッキングや複数注文を同時に仕分けするマルチピッキングの採用がおすすめです。
さらに、手作業では在庫管理が煩雑になりやすいという課題もあります。在庫数の増減がリアルタイムで反映されないため、正確な在庫把握に手間がかかり、誤出荷や欠品のリスクも高まります。
この問題を防ぐためには、在庫管理システムやバーコードリーダーを導入し、ピッキング作業と在庫情報を連動させることで、リアルタイムに在庫状況を管理する仕組みが必要です。
ピッキングを効率化するためのコツ
物流におけるピッキング作業の効率化には、複数の有効なテクニックが存在します。作業指示書の最適化
まず基本となるのは作業指示書(ピッキングリスト)の最適化です。商品を最短ルートで集められるように保管棚の順番や表示情報を整理したり、バーコードを活用して誤出荷を防止したりすることで、作業時間の短縮と正確性の向上が可能です。特にアイテム数やオーダー数が多い場合は、バーコードによる検品と連動した管理が効果的でしょう。
5Sの徹底
次に、物流現場での5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底も重要です。商品や備品が乱雑に置かれているとヒューマンエラーが発生しやすく、ピッキング効率も低下します。出荷頻度の高い商品を作業エリアに近い場所に配置する、商品コードが確認しやすい向きで保管するなどの工夫により、無駄な作業工程を削減できます。また、作業者全員が5Sの重要性を理解し、意識して運用することも現場効率化の鍵です。
ロケーション管理の適切な運用
さらに、ロケーション管理の適切な運用も効率化に寄与します。固定ロケーション、フリーロケーション、ダブルトランザクションなど、倉庫の特性に応じた保管管理方法を採用することで、商品を探す時間を削減できます。これにより、ピッキング作業全体の効率が向上することでしょう。
システム・マテハン機器を導入する
加えて、システムやマテハン機器を導入することで、作業の自動化・効率化を図ることも可能です。ただし、機器導入にはコストがかかるため、費用対効果の検証が必要です。アウトソーシングを行う
また、物流業務そのものをアウトソーシングする方法もあります。外部の物流代行業者に委託することで、自社では導入が難しいシステムや設備を活用でき、業務効率や品質の向上が期待できるほか、自社リソースを商品開発や販促などのコア業務に集中させることも可能です。ピッキングを効率化できるシステムとは
物流現場におけるピッキング作業の効率化には、さまざまなシステムや機器の導入が有効です。代表的なものとして、デジタルピッキングシステム(DPS)やデジタルアソートシステム(DAS)、ゲートアソートシステム(GAS)、ピッキングロボット、ハンディターミナル、タブレットピッキング、RFIDタグなどがあります。これらは、作業時間の短縮やヒューマンエラーの抑制、在庫管理の正確性向上に貢献します。

