業務効率化の必要性が叫ばれる昨今、自社の業務改善をしようと考える物流企業も多いことでしょう。物流業界の業務改善には多様なアプローチがありますが、とくに倉庫レイアウトの見直しと改善が有効とされています。本記事では、倉庫レイアウトの基礎から、最適化によるメリット、設計の考え方までわかりやすく解説していきます。
適切な倉庫レイアウトで期待できる効果
近年、EC市場の急速な拡大にともない、物流の重要性は一層高まっています。倉庫の効率的な運用が企業経営において大きな影響をもつようになっており、倉庫レイアウトの最適化はその中でもとくに重要な課題となっています。倉庫レイアウトは、単に商品を保管するための空間配置にとどまらず、作業効率やコスト、さらにはリスク管理にも直結する要素です。倉庫レイアウトが適切でない場合の悪影響
倉庫レイアウトが適切でない場合、まず作業効率に大きな影響が出ます。商品が整理されていない状態で保管されていると、ピッキング作業において最短ルートで移動することができず、作業時間が延びてしまいます。その結果、作業にかかる人件費が増加し、物流コストの増大につながってしまうのです。また、倉庫を賃借している場合には、スペースを有効活用できないことで保管費が余計にかかるなど、経済的な負担も発生します。さらに、商品の取り違えや誤出荷といったミスのリスクも高まるため、顧客満足度の低下や信頼損失といった影響も無視できません。
倉庫レイアウトを最適化する利点
一方で、倉庫レイアウトを最適化すると、業務全体に多くのメリットが生まれます。商品の配置や通路の設計を工夫することで、移動距離を短縮可能です。その結果、作業時間の短縮にもつながり、人件費や管理費の削減が可能です。それ以外にも商品取り違えのリスクも低減され、品質管理や安全性の向上にもつながります。さらに、適切なレイアウトは倉庫スペースを最大限に活用できるため、保管効率の向上にもつながります。
倉庫レイアウトの設計は、新築でなくとも改善は可能です。ただし、その際には単に通路や棚の配置を変えるだけでなく、保管量や商品の種類、出荷頻度などを踏まえた設計が重要です。
また、物流の状況や商品の変動に応じて、定期的にレイアウトを見直し、改善していくことが求められます。
倉庫のレイアウトの基本
倉庫の基本的なレイアウトには、主に「I型」と「U型」の二種類があります。それぞれのレイアウトは、倉庫の規模や作業内容、作業員の数に応じて適切に選択することが求められます。I型レイアウト
I型レイアウトは、入荷から出荷までの作業スペースを一直線に並べる形式です。商品の量が多く、作業スペースが比較的狭い場合に有効で、入荷作業と出荷作業を同時に進められる点が大きな特徴です。また、倉庫の両端に扉を設けることで、入荷と出荷の場所を分けることができ、作業の混雑を避けやすくなります。一方で、作業スペースや通路が狭い場合、複数の作業員が同時に作業を行うと互いの動線が交錯し、作業効率が低下する可能性があるため、注意が必要です。
U型レイアウト
U型レイアウトは、入荷と出荷の場所を同じ側に配置し、倉庫内でU字型に作業スペースを配置する形式です。このレイアウトでは、各作業が流れるように進められるため、複数の作業員が同時に作業しても互いに干渉しにくく、狭い倉庫や通路でも効率的に運用できます。ただし、保管スペースを十分に確保すると作業スペースが狭くなり、作業効率に影響する場合があるため、バランスの調整が重要です。
レイアウトの設計方法
倉庫レイアウトの設計は、物流業務の効率化やコスト削減に直結する重要なプロセスです。現状把握
設計にあたっては、まず現状の作業工程を詳細に把握することから始めます。具体的には、入荷、検品、入庫、保管、出庫、梱包、出荷といった一連の工程を洗い出し、それぞれの作業に必要なスペースや設備を明確にすることが不可欠です。これにより、倉庫内で確保すべきスペースや共有スペースを適切に判断でき、無駄な動線やスペースの浪費を防ぐことができます。倉庫によって細かい作業内容は異なりますが、基本的な流れはほとんどの倉庫で共通しているため、これを基準に設計を進めることが可能です。
レイアウトの決定
レイアウト決定の段階では、平面上の無駄なスペースだけでなく、倉庫の高さを活かした高さロスの削減も重要です。たとえば、重量ラックの間に棚を設置したり、通路上部に保管スペースを構築したりすることで、限られた倉庫面積を最大限に活用できます。また、各作業工程の間の距離も考慮する必要があります。作業場所が遠すぎると、移動時間が増えて効率が低下するため、入荷から出荷までの動線ができるだけスムーズになるよう設計することが大切です。
作業導線を一筆書きのように整理することで、作業効率の向上や作業員の負担軽減につながります。
保管場所の決定
在庫品の保管場所の決定も重要なポイントです。商品の出入り頻度や重要度に応じて、効率的にピッキングできる場所に配置することが求められます。たとえば、出荷量が多い商品は中央通路寄りに配置し、出荷頻度が低い商品は通路幅の狭い場所に配置するといった工夫が有効です。このように、商品の配置と動線を最適化することで、倉庫内の作業効率を最大化できます。
適切なレイアウトを設計するにはどうすればいい?
倉庫内の商品レイアウトは、作業効率や物流コストに直結する重要な要素です。同じ倉庫内でも、どの位置にどの商品を配置するかによって、作業時間や労力が大きく変わるため、戦略的に配置を考える必要があります。基本的な考え方としては、使用頻度の高い商品は取り出しやすい位置に、使用頻度の低い商品は奥のほうに配置することが大切です。そうすることで、無駄な移動や作業の重複を避けることができます。つまり、出庫頻度に応じた商品配置が、倉庫業務の効率化の鍵となります。商品レイアウトを考える際には「ABC分析」が有効
ABC分析とは、商品の重要度や流動性に応じてグループ分けする手法で、今回は出荷頻度にもとづいて分類します。具体的には、Aが流動性や出荷頻度の高い商品です。このグループは頻繁に取り出すため、作業効率を優先して配置しましょう。Bは出荷頻度が平均的な商品です。作業効率と保管効率のバランスを考えて配置します。Cは出荷頻度の低い商品です。取り出す回数が少ないため、保管効率や商品状態の維持を優先した配置をしましょう。
このように分類することで、とくに重要な商品を倉庫の出入り口付近やメイン通路沿いの最短距離の導線に集中させることが可能となり、ピッキング効率の大幅な向上につながります。
ロケーション管理も欠かせない
倉庫内での正確な管理には、ロケーション管理が欠かせません。ロケーションとは、棚やスペースごとに割り当てられる番号で、商品の住所のような役割を果たします。棚ごとに番号を付与することで、どの段にどの商品が保管されているかを瞬時に把握できるため、作業員は迷わずピッキングを行うことが可能です。また、ロケーション管理は在庫の過不足や棚卸作業の精度向上にもつながります。

