現在、物流を取り巻く環境は大きく変化しています。労働時間短縮・人手不足により業務遂行に支障をきたすことも珍しくありません。これらの問題を解決するためには、物流の業務効率化を進める必要があります。本記事では、物流の効率化をはじめとした様々な課題の解決策を提示してくれる、物流コンサルティングについて詳しく解説します。
そもそも物流コンサルティングとは?
物流コンサルティングとは、物流やロジスティクス分野に特化して企業の課題解決や業務改善を支援するサービスのことです。彼らの業務領域は極めて広く「物流」や「ロジスティクス」と一言で言っても、その中には保管、荷役、配送、輸送、さらにはそれらを支えるITシステムといった多様な要素が含まれます。加えて、アパレル、食品、卸、家電など業界ごとの特性や、経営戦略・M&Aといった企業経営の上流に関わる領域まで多岐にわたるため、物流コンサルティングの仕事は非常に複雑かつ専門性が高いです。
物流戦略の策定
物流コンサルティングの仕事は単なる業務改善にとどまらず、企業の経営方針や市場環境を踏まえたうえで最適な物流戦略を策定することにも及びます。そのため、現場レベルの効率化から経営戦略の立案まで、幅広い視点で課題を分析し、実行可能な改善策を提示する力が求められます。複数の専門分野の切り口を持つ
さらに、物流コンサルティングの専門分野は「業務」「業界」「経営」といった複数の切り口を掛け合わせることでより細分化されます。例えば「保管」という業務においても、食品業界とアパレル業界では最適な保管方法や注意点が大きく異なります。食品の場合は温度管理や衛生基準が重視される一方、アパレルでは在庫の回転率やシーズン管理が重要視されやすいです。このように、同じ業務領域でも対象とする業界が違えば、必要とされる知識・ノウハウはまったく異なるものとなります。
物流コンサルティングのサービス内容
物流コンサルティングのサービス内容は、荷主企業や物流企業が抱える物流に関する課題や問題を解決し、最適な物流体制を構築することにあります。荷主とは、製品を出荷する立場の企業や個人を指し、主にメーカーや卸売業者などが該当します。一方、物流企業とは荷主から輸送・保管などを請け負う運送会社や倉庫業者のことです。物流コンサルティングは、これらの顧客に対して、現状の問題を把握・分析し、理想的な物流の仕組み、すなわち「あるべき姿」を提示する役割を担っています。
顧客の現状把握がスタートライン
その業務の出発点となるのが、顧客の現状把握です。まず定量分析を行い、入出庫データ、在庫数、保管コスト、輸送コストなど、数値で把握できる情報を徹底的に分析します。これにより、現状の物流効率やコスト構造の実態を把握可能です。一方で、数字だけでは見えてこない問題を掘り下げるために、現場の従業員や物流担当者へのヒアリングを実施し、定性分析も行います。ここでは、現場での作業手順やコミュニケーションの問題点、組織体制の課題など、数字では表れにくい「現場の声」を拾い上げることが重視されるのです。
あるべき姿の策定
これらの分析結果をもとに、顧客企業の経営方針や事業戦略と整合性を持たせながら、将来的に目指すべき「あるべき姿」を設計します。続いて、現状とのギャップを明確化し、その差を埋めるための改善策を具体的に提案していく流れです。改善策には、作業プロセスの見直しや倉庫レイアウトの再設計、輸送ルートの最適化、在庫管理システムの導入、さらには人員配置や教育体制の改善など、多岐にわたる施策が含まれます。
ベンチマーク分析を行うこともある
また、顧客の課題によっては、競合他社の物流体制や業界全体の動向を調査し、ベンチマーク分析を行うこともあります。必要に応じて、行政機関へ出向き関連する法規制や制度を確認するなど、専門的な調査業務も発生します。さらに、ITシステムの導入支援を行うケースも多いです。顧客の要望に応じてWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)などの導入計画を策定し、運用支援を行います。
物流コンサルティングの役割
物流コンサルティングとは、あらゆる産業や社会活動の基盤を支える「物流」を専門的な視点から最適化し、企業の発展と社会の安定に貢献するサービスです。物流は製造・販売・消費といったすべての経済活動に深く関わっており、その重要性は極めて高いものです。例えば携帯電話を例にとると、各種パーツが全国の工場で生産され、組立工場に届けられ、完成後は店舗や量販店へと配送されます。私たち消費者の手元に届いた後も、その携帯電話を充電するための電力が発電所から電線を通じて供給されており、その送電設備の保守に必要な部品までも物流によって届けられています。
このように、物流はあらゆるモノの流れを支える存在であり、まさに社会の血流のような役割を果たしているのです。
様々な業界にかかわるサービス
そのため、物流コンサルティングは多様な業界に関わることができるという特長を持っております。業界や商品の数だけ物流の形が存在するため、特定の業界に特化して専門性の高いサービスもあれば、複数の業界を横断して知見を応用して幅広くサービスを提供するものもあります。商品の流れを管理・統制に欠かせない要素
企業にとって物流は、商品の流れを管理・統制するために欠かせない要素であり、これを軽視しては事業そのものが成り立ちません。海外では物流戦略の重要性が広く認識されており、「CLO(Chief Logistics Officer=物流担当役員)」という役職が設けられている企業も少なくありません。これは、物流が単なるコスト要素ではなく、経営戦略の根幹をなすものであることを示しています。営業活動によって受注を獲得しても、在庫管理や配送が適切でなければ売上は成立せず、逆に過剰在庫を抱えれば経営を圧迫します。
また、震災などによって物流が止まると、経済全体が麻痺し、企業のみならず社会そのものが機能しなくなってしまうことでしょう。このように、物流は産業の根幹であると同時に社会インフラの一部でもあります。
物流コンサルティングは、直接モノを運ぶわけではありませんが、モノの流れを円滑にするための仕組みを設計し、企業活動と人々の生活を支えるという極めて意義深い役割を担っております。すなわち、物流コンサルティングは、社会の安定と成長を陰で支える専門職であるといえるでしょう。
物流コンサルティングに依頼するには?
物流コンサルティングへの依頼は、企業が物流に関する課題を抱えた際に、その専門的な知見を活用して解決を図るための有効な手段です。依頼のタイミングは、荷主企業と物流企業で異なります。荷主企業の場合は、物流戦略の策定やコスト上昇への対応、物流倉庫の移転といった具体的な課題が生じたときが依頼の好機です。一方、物流企業では、経営・人事・営業面などの組織運営上の悩みや課題が発生した際に、コンサルタントの支援を受けることが効果的です。
また、物流業界向けにシステムや不動産などのサービスを提供する企業も、業界知識の強化や市場理解を目的として物流コンサルティングへ依頼するケースが増えています。
依頼を行う前の準備
依頼を行う前に、まず社内で準備しておくべきことがあります。最初に行うべきは、課題の整理と依頼内容の方向性を決めることです。特に「ゴール(最終的に達成したい目的)」を明確に定めることが重要で、これによりプロジェクトの方向性がぶれることを防げます。物流コンサルティングの分析過程で新たな課題が見つかり、優先順位が変化する場合もあるため、最初から細かい手段まで決めるのではなく、あくまで最終的な目標を定めておくことが望ましいです。
社内の合意形成
次に必要なのは、社内の合意形成です。物流コンサルティングでは、データの提供や現場視察が行われるほか、改善施策の実行段階では物流部門以外の部署にも影響が及ぶ可能性があります。そのため、全社的な取り組みとして実施することへの理解と協力を得ておくことが不可欠です。関係部署が協力体制を整えておくことで、コンサルティングの効果が最大化されます。

